再放送が決定した「四畳半神話大系」の予告編動画は、こちら
大学に入学した時、それはもう薔薇色のキャンパスライフを期待したものだ。
公私共に何もかも上手く行き、広がる交友関係、つながる男女の色めきが私を待っているのだと。
高校時代は薔薇色どころか錆びた鉄クズの様なある意味では味のある3年を過ごした私だが、大学デビューさえすればきっと、きっと上手く行くのだと。
だが現実は甘くなかった。そもそも薔薇色のキャンパスライフを送るにはそれ相応の社交性、所謂コミュ力を身に着けていなければならなかったのだ。
それを怠った私に光り輝く生活なぞ降ってくるワケはなく、棚から牡丹餅どこから棚から賞味期限切れの葛餅が落ちてきそうな苦い4年間を過ごし、無事社会不適合者が世に送り出されたのだった。
覆水盆(ふくすいぼん)に返らず・・・「一度離婚した夫婦は元に戻ることはできない」、「一度起きてしまったことは二度と元には戻らない」と言う意味。
そうは分かっていてもやり直しのチャンスがあれば、時を遡りたいと思うのが人情。
本作、四畳半神話大系はそんな淡く甘く儚くゲロマズい非リアの幻想を叶えようと粉骨砕身したアニメスタッフ決死の1作である。(2022年に再度見ても意気込みが凄い)
兎角、声を大にして叫びたいのはこの一点。
私の大学生活を悲惨な目にした責任者、責任者はどこか。
主題歌
OP:ASIAN KUNG-FU GENERATION「迷子犬と雨のビート」
ED:いしわたり淳治&砂原良徳+やくしまるえつこ「神様のいうとおり」
第1話のあらすじと感想・見どころを紹介
第1話のあらすじ
憧れのキャンパスライフを送ろうとテニスサークルを選んだ「私」。
しかし、社交性も何も身に着けぬままサークルに入った「私」を待っていたのは黒く暗く哀しく寂しい灰色のキャンパスライフだった。
絶望の中で出会った同じ境遇を持つ男、小津と共に人の恋路を破壊し続ける黒いキューピットとなった「私」。
小津と出会わなければ今頃は黒髪の乙女と甘く切ない薔薇色のキャンパスライフを送っていたに違いないと思う「私」。
そう、小津とは違う、別のサークルを選んでいたなら…!
第1話の感想
四畳半神話大系とサマータイムマシンブルースのコラボレーション作品であり、原作を書き上げた森見先生と上田先生双方のファンがその公開を待ちわびています。
2022年4月からのノイタミナ枠は、そんな四畳半タイムマシンブルースの公開を記念して四畳半神話大系が再放送されています。
作品自体はもう12年も前になりますが、その魅力は決して色褪せません。
作品が放送されていた当時、まさに大学生活を送っていた私にとって非常にタイムリーな作品であり、毎度仄暗い哀しみを持ちながら腹を抱えて笑ったものです。
1話を見るのも久々で、テニスサークルで大学デビューに失敗した「私」がもう一度1年生から大学生活をやり直したい!
小津と出会わなければ、もっと違う結果を得たハズ!と切に願うシーンは胸が痛みますが、同時に笑いを堪えられません。
舞台が京都ということもあり、ちょっとしたファンタジー要素も含まれていますが、不思議と嫌味がありません。むしろそのファンタジー要素のお陰で来週もこの喜劇(悲劇?)が見られるのだと思うと嬉しくなります。
湯浅監督が作り出すハイクオリティな映像で綴られるダメ人間の大学生活、というと刺さる人は限られるかもしれませんが、食わず嫌いせず、一度視聴してみて欲しいですね。
(「私」役の浅沼さんの名芝居だけでも聞いて行ってほしいところです。)
特に、私の様に学生生活に華やかさが決定的に欠けていた人、そう、そこの貴方!
この作品を推薦した私の「慧眼に脱帽」するハズですよ…。
第1話のまとめ
今回「私」はテニスサークルを選び、そして「諸々に失敗」します。
全ては自身の決断が招いた結果ですが、納得できない「私」はサークル選びに失敗したことを後悔し、入学した際に別のサークルを選んでいればこんなことにはならなかったと考えます。
来週以降はその可能性を追いかけるヒューマンドキュメンタリーが始まります。
希望に燃える「私」が薔薇色のキャンパスライフを手に入れられる様、画面の前で「私」が小津の魔の手を掻い潜ってサクセス出来る様に応援しましょう!
第2話のあらすじと感想・見どころを紹介
人は過ちを繰り返す生き物である。
そして行動原理に何かしらの共通点がある生き物である。
失敗をした時、「あの時、あんなことをしていなければきっと違う結末を得たハズ」と、誰しもが思うモノであるが、性根が変わらないのだから、仮にやり直したとて結果は案外変わらなかったりする。
兎にも角にも何度失敗しようが、そんな時はいつものアレを叫べばいいのだ。
責任者、責任者はどこか!
第2話のあらすじ
大学1年生、ピカピカの新入生である「私」は数あるサークルの中から映画サークルを選んだ。
映画撮影を通して黒髪の乙女との甘い大学生活を夢見た「私」だったが、そこは城ケ崎先輩が絶対的な王として君臨しており、どうにも冴えない「私」は王である城ケ崎先輩の引き立て役としてこき使われる日々を送るハメになってしまう。
そんな日々を過ごす中、同じ境遇を送る青年、小津と出会う。
引き立て役を押し付ける城ケ崎先輩の素性を明かす告発映画を二人で撮り、先輩を王座から引きずり下ろす計画を企てたのだが、小津の存在が事態を思わぬ方向へ走らせてしまうのであった。
第2話の感想
さぁ今回も馬鹿に阿呆が大暴れする内容の2話でしたね。
エポック過ぎる内容の暴露映画、現実なら訴訟問題にまで発展しかねない内容ですが、因果応報という言葉通り、城ケ崎先輩には丁度良いくらいのお灸ではないでしょうか。
2話を視聴した皆さんならもうお分かりかと思いますが、四畳半神話大系という作品は基本的にこんな形で最終話付近まで進みます。
紆余曲折あれ「私」は必ず小津と出会いますし、明石さんとの約束はギリギリまで忘れています。
じゃあ来週もそんな感じなら見なくても良いじゃないかと思いますが、2話までご覧になった皆さん、もう来週が待ち遠しくなっていませんか。
そう、気が付いたら大体同じ内容なのにまた見てしまう。それが四畳半神話大系なのです。
来週はどんな失敗を魅せてくれるのか、心待ちにしましょう。
(過去作ということで、各種動画配信サイトで先を見ることが出来ますので、先が見たい!という方は是非そちらも)
第2話のまとめ
映画サークルを選んだ「私」でしたが、結局小津と出会ってしまい、陰鬱な大学生活を楽しんでしまいました。
来週こそ小津と出会わずに明石さんとの約束を果たすことが…出来ないとは言いませんが多分出来ない気がします!
第3話のあらすじと感想・見どころを紹介
何事も程々が肝心である。
健康関連でも勉学でも仕事でも、だ。
四畳半神話大系3話では、「私」がやること成すこと全てがやり過ぎてしまったせいで哀しい結末を迎えてしまう。
人間というモノは生きていくだけならば、少しぐらい怠けた方が丁度いいのかもしれない。
とはいえ、大体の人間の「少し怠ける」というのは出来ずに「滅茶苦茶に怠ける」のが常なのだが。
私の人生も怠けに怠けた結果として今があるのだが、そもそも誰かがそれを止めてくれていればこんな人生になどなっていなかったはずである。
責任者、責任者はどこか。
第3話のあらすじ
ピカピカの大学一回生を迎えた「私」は数あるサークルの中から自転車サークルを選んだ。
黒髪の乙女を後ろの荷台に乗せ、風を切って紡がれる甘く切ない恋物語が始まるのだと胸弾ませる「私」。
しかし彼を待っていたのはサークルとは名ばかりのガチガチの体育会系活動だった。
自身の少ない体脂肪をそぎ落としながら薔薇色の大学生活もそぎ落としてしまった「私」。
同じような境遇の小津という青年と出会うが、無視することに。
どうにか自転車サークルで一旗揚げたい「私」は、マシンスペックを極限まで上げれば大会で勝利し、薔薇色の大学生活を取り戻せると考え、学業そっちのけでバイトに勤しむ。
そうして稼いだ大金を叩いてハイスペックマシンを手に入れた私だったが、大会直前にニコニコ自転車整備軍に自転車を半ば強引に撤去されてしまう。
そしてこれを機に、太陽に向かって飛んだイカロスが地に堕ちた様に、「私」の転落が始まったのだった。
第3話の感想
今回は自転車サークルを選んだ「私」ですが、無事失敗し、一回生の時に別のサークルを選んでいればと後悔して終わりを迎えます。
体育会系の部活動に所属していた筆者もスポーツの辛さはある程度分かるので、今回は半分笑って半分同情する話でした。
面白いのは、よりによって選んだサークルが自転車ということでしょうか。
ロードバイクはやたらと費用がかかるスポーツですので、アルバイトが出来る大学生が故に悲惨さも跳ね上がりましたね。
物語後半から舞台は自転車サークルから明石さんが新たに所属したバードマン同好会へと変わりますが、このバードマン同好会でも「私」は相変わらず「私」でした。
無駄に鍛え上げたマッシヴな肉体を手に入れた「私」が見られるのは全体でもこの回くらいなモノで、「私」ファンにとって貴重な回となっていますので、もう一度見たい方は各種サブスクを利用しましょう。
さて、今回も結局小津のせいで空回りし、明石さんとの約束が果たせなかった「私」ですが、次回はどんな阿呆を魅せてくれるのでしょうか。
第3話のまとめ
第三話は不毛な情熱を燃やしに燃やして燃えカスになってしまった「私」。
自身をイカロスに例える冴えを見せるが、今回も明石さんとの約束は果たされませんでした。
次回は物語の毛並みが変わり、今までは一味違う展開を見せてくれますので、ちょっと飽きてきたなという方も安心して視聴できると思いますよ!
登場人物
私
1年生時、今回は数あるサークルの中から映画サークルを選ぶ。が、しかしながら前回のテニスサークル同様に大学デビューに無事失敗。
映画サークルでは城ケ崎先輩の引き立て役としてこき使われ、散々な日々を過ごす。
同じく城ケ崎先輩の圧政に苦しむ小津と出会い、城ケ崎先輩を失脚させるべく行動を起こす。
製作した映画により城ケ崎先輩に一矢報いるも、当然だがサークル内に居場所を失い、強制的に映画サークルを退会。
もしも1年生時に別のサークルを選んでいればと後悔する。
そして今回も明石さんと交わした約束を土壇場まで忘れている。
小津
映画サークルにて、「私」と共に城ケ崎先輩を失脚させるべくエポックな内容の映画を製作する。
外見同様に悪辣な精神を有しており、華やかな大学生活を送るハズだった「私」の道を大いに乱し、壊し、そしてどうしようもなく楽しくしてしまう男。
もし彼がいなければ本作は餡の無いアンパンである。
明石さん
「私」の一学年下の後輩。
小津と共に阿呆な行いを繰り返す「私」の数少ない理解者。
映画サークルにおいては城ケ崎先輩に靡くことなく「私」が制作した映画を純粋に楽しんでいる。
前回と同じく「私」と交わした約束が果たされることを待ち続けている。
城ケ崎先輩
映画サークルを掌握し、自身を王とした圧政を強いている。
製作される映画は京都の町中を流れる川の如く浅いが、本人の見てくれの良さから女子人気だけはある。
引き立て役を押し付け続けた報いが如く、「私」が制作したエポックすぎる暴露映画が発表されたことで、本人の性癖が赤裸々にサークル内にブチ撒けられてしまう。
キャスト&スタッフ
キャスト(役/声優)
私:浅沼晋太郎
小津:吉野裕行
明石さん:坂本真綾
樋口さん:藤原啓治
城ケ崎先輩:諏訪部順一
羽貫さん:甲斐田裕子
スタッフ
原作:森見登美彦(太田出版 角川文庫刊)
製作:遊佐和彦、冨川八峰、北川直樹、高田佳夫、新坂純一、宍戸健司
監督:湯浅政明
シリーズ構成:上田誠
脚本:上田誠、湯浅政明
キャラクター原案:中村佑介
キャラクターデザイン・総作画監督:伊東伸高
美術コンセプトデザイン:河野羚
美術監督:上原伸一
色彩設計:辻田邦夫
撮影監督:石塚恵子
編集:木村佳史子
音響監督:木村絵理子
音楽:大島ミチル
音楽プロデューサー:佐野弘明
チーフプロデューサー:山本幸治
プロデューサー:竹内文恵、尾崎紀子
アニメーションプロデューサー:藤尾勉
アニメーション制作:マッドハウス
制作:四畳半主義者の会(アスミック・エースエンタテインメント、フジテレビジョン、ソニー・ミュージックエンタテインメント、電通、東宝、角川書店)
作品自体は2010年と決して最近の作品ではないが、見返してみると、キャスト陣は実力と人気を兼ね備えた面々が揃えられている。藤原啓治さんが織りなす芝居は、いつ聞いても心が揺れ動く。
製作陣に関してだが、流石に湯浅政明氏に触れざるを得ない。
ケモノヅメをWOWOWで視聴した衝撃は未だに色褪せずにおり、幼心に鬼才とは何たるかを刻み込まれたものである。
本作は血しぶきが飛び交う様な作品ではないが、それでも湯浅ワールドは如実に表現されており、匂い立つと言ってもいい。
本作の後も、アニメ版ピンポンやDEVILMAN crybaby、映像研には手を出すな!と言った傑作を世に送り出し続ける湯浅氏。本作が気に入ったのであれば、前述した作品も是非見て頂きたい。
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