ゴールが果てしなくエンドレスだった制作の始まり
ふと思い立ったことからバンドを結成した不良学生たち。
楽器を触ったこともなかった彼らがついに野外フェスでライブを行う、というアニメーション映画である。
じつは、この映画は異常ともいえるほどの執念によって制作された。
その制作は岩井澤健二監督が7年という歳月をかけて一人で行った。
岩井澤氏によれば「はじめは3年かかるかな?」という考えていた。
どうして自分を信じられたのか?制作中に地獄を見た監督
この映画を制作するにあたって、様々なことを岩井澤氏は調べていた。
その結果得られたことは「テーマが暗い」だった。
これは当時公開されていた映画では「暗い話が多い」とその状況に違和感を感じていた。
世の中が不穏な空気につつまれているなかで「なぜわざわざ暗いテーマを取り上げてやるんだろうか?」と疑問だった。
そこで、明るいテーマのものがポンと出てきたらそれだけで目立つ!それをつくればいいと監督は閃いた。
岩井澤氏は“ロトスコープ”という手法でこの映画の制作に着手した。
2012年である。制作の過程はおおむねこのようである。
原作→コンテ(アニメではなく、実写を撮るためのコンテ)→実写の撮影→編集
編集の段階から“ロトスコープ”が用いられた。
PCで実写で撮影された映像から線画の作成を4万枚。
さらに線画からアクリル絵の具を使用してカラーの原画を作成(これも4万枚)。
すべて手書きである。
これは、1秒間の映像制作に約2週間かかる、という途方も無い労力である。
しかも、原画を描くために用意した用紙は特殊な紙で、8万枚以上を確保するのにもたいへんな思いをしている。この作業を岩井澤氏はひとりで7年間(!)黙々と続けていた。
映画「音楽」は、どんな映画なのか
この映画から聴こえてくるリズムは、聴いているうちにだんだんとトランス状態へとなっていく。
例えるなら、この世からあの世へいってしまうような浮遊感である。
また、登場するキャラクターたちのやりとりには「ツッコミ」がない。
そして、映画「音楽」の最大の魅力はやりすぎるくらいの「会話の間」である。
この間の使い方の絶妙さを楽しめるのが「音楽」である。
度肝を抜かれる映画「音楽」
監督 岩井澤健二 氏はなぜ地獄のような制作作業を7年間もひとりで続けて、この前代未聞の映画「音楽」をつくりだせたのか。
「やるしかない」という状況が監督の自己肯定感を高めることになった。
「明るいテーマの映画をつくる」と閃いたときから自分を信じられるようになったという。
この映画「音楽」は我々の度肝を抜くために生まれてきた。
視聴方法
GYAO!でレンタル出来ますので、興味がありましたら見てみてください。
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