「ゲッターロボアーク」の予告編動画は、こちら
未完の作品というと何が思い浮かぶだろうか
理由は大人の事情と称されるモノから作者の熱意が無くなってしまった、或いは作者が鬼籍に入ってしまった等、多岐に渡る。
本作、ゲッターロボアークは原作となったコミック版が作者である石川先生が鬼籍に入ったことで未完となっている。
それ故アニメ化に際し、ファンからはアニメ版も未完のままぶつ切りの様に終わってしまうのだろうという声が多かった。
文字通り運命を超え、その先を我々に示したのだ。
本作品は熱意というモノが作品を世に出す上で如何に重要か、それをまざまざと見せつけた傑作である。
※本作、ゲッターロボアークはコミック版ゲッターロボシリーズの最終作となっている。
その為、テレビアニメ版のゲッターロボシリーズやOVA3作品とはストーリーが異なっている。
その上で原作コミックシリーズの最終作のみがアニメ化されるということで、原作コミック未読の場合は基本的に登場キャラクターの素性や本作に至るまでの経緯は不明瞭になってしまう。
あらすじや後述する感想において、詳細等を省いて記載する場合もあるが、ご容赦願いたい。
主題歌
OP、ED共にJAM Projecが担当している。
EDに関してはOVAシリーズの各主題歌をアレンジした楽曲が一定の話数ごとに入れ替わる形で放送された。
OP:Bloodlines〜運命の血統〜
ED:DRAGON 2021(1~4話)
STORM 2021(5~8話)
HEATS 2021 (9~12話)
あらすじ
地球の命運を賭けたシベリア戦線。
その最終局面にて真ゲッターロボが火星へ飛び立ち、十数年の時が経った。
ゲッターロボシリーズに搭乗し、激戦を潜り抜けたパイロットの1人、神隼人はゲッターロボ開発者である早乙女博士の意志を継ぎ、ゲッター線の解明と新たな侵略者であるアンドロメダ流国との戦いを繰り広げていた。
その隼人の前に、真ゲッターに搭乗し火星へと飛び立って以降、消息を絶った流竜馬の息子と名乗る流拓馬、同じく火星に飛び立ったタイールの弟である山岸獏が現れる。
ゲッターの申し子とも呼べる拓馬の登場に逃れられぬ運命を感じた隼人は、人類とハチュウ人類のハーフであるカムイ・ショウを含めた3人に人類最後の希望であるゲッター、「ゲッターロボアーク」を託すのであった。
登場人物・ロボット
流拓馬
歴代ゲッターロボに搭乗し、数々の死闘を潜り抜けた流竜馬の息子であり、ゲッターアークのパイロット。19歳。
父である竜馬が膨大なゲッター線を浴びていた為、生まれながらにしてゲッター線へ適応する遺伝子を持った正にゲッターの申し子と呼ぶに相応しい存在。
母をアンドロメダ流国に殺害されており、母を手にかけた黒幕を探している。
物語が進む中で、ゲッター線が作り出す絶望的な未来を見てしまうが、悲観に暮れることなく新しい未来を切り開こうと決意。
人類廃絶を標榜し、チームを離反したカムイとの戦いに臨む。
カムイ・ショウ
人類とハチュウ人類のハーフであり、ゲッターキリクのパイロット。19歳。
人類でありながらハチュウ人類であるという自身の存在を好意的には捉えておらず、物語の序盤は自身を物珍しく見る者に対して攻撃的な態度を取っていた。
拓馬・獏と共に死線を切り抜けることで、徐々にではあるが彼本来の優しい性格を取り戻していく。
しかし、激化していくアンドロメダ流国との戦闘の中で、ゲッター線がこのまま人類を導けば、その先にあるのは絶望的な未来であることを知ってしまい、ゲッターチームから離反。
アンドロメダ流国から渡された超兵器「バグ」を用いて人類廃絶を標榜する。
山岸獏
グリーンアース教の教祖タイールを兄に持つ、ゲッターカーンのパイロット。22歳。
タイール程ではないが予知能力を持っており、様々な場面で役立てていた。
アンドロメダ流国との戦闘を繰り広げる中で最強にして最大のゲッターロボ、「ゲッターエンペラー」と邂逅。
エンペラーと行動を共にすることで、ゲッターを解明出来るのではと考え、拓馬と別れる。
神隼人
拓馬の父である竜馬と共にゲッターロボに搭乗し、数々の強敵たちと戦った初代ゲッターチームの1人。
ゲッターロボ開発者の早乙女博士の意志を継ぎ、ゲッター線の解明を行いつつ、アンドロメダ流国との戦闘における陣頭指揮も執っている。
初代ゲッターロボに搭乗していた頃から察するに50代前後の年齢の筈だが、生身の白兵戦においても驚異的な強さを誇る。
アニメ版の本作において登場シーンが大量に追加されており、拓馬に加えてもう一人の主人公と言っても過言ではない。
言わばアニメ版ゲッターロボアークとは、神隼人の旅の終わりを紡いだ物語でもある。
ゲッターロボアーク
ゲッターロボの開発者、早乙女博士の最後の遺産。
3機のゲットマシン(アーク号、キリク号、カーン号)が合体することで真価を発揮する。
どのゲットマシンが主体となるかによって性能が異なり、アーク号主体となるゲッターアークは汎用性に優れたバランス型、キリク号が主体となるゲッターキリクは速度に優れた超高機動戦型、カーン号が主体となるゲッターカーンは水中戦に優れた局地戦型と状況に応じて変形することで高い対応力を発揮する。
上記の歴代ゲッターロボが有する基本的なメカニズムに加え、ゲッターロボアークの特徴として、旧機である真ゲッターロボの開発過程で得られたノウハウを活かすことで、歴代ゲッターロボにおいて最も安定的、且つ効率的なエネルギー消費を行える点がある。
要はパイロットその他諸々を取り込んで勝手に火星に飛んでいった真ゲッターの様な健康優良不良ゲッターではなく、真面目な優等生ゲッターなのである!
ゲッター線
宇宙からドワォ!!って降り注ぐメッチャすごいエネルギー。
残念ながらゲッター線を説明するには悠久の時を要する為、本項で全てを語ることは出来ない。
ゲッターロボの動力源であることは勿論だが、それ以外にも様々な効果や意味合いを持つ。
強いて言うならば、人類を進化させようとする意志を持ったエネルギーである。
人類を進化させるというと聞こえは良いが、人類さえ進化すれば他はどうなっても構わないという側面もある為、カムイの離反という悲劇が生まれてしまった。
感想
運命を、超えろ。というキャッチコピーが公式サイトに載っています。
始めは物語本編の内容のことを指しているのかなと考えていました。
このままゲッター線を享受すれば、悲劇的な未来が訪れてしまう、そんな運命を超えるという意味合いだと考えていました。
確かにそうとも取れるのですが、私には最終話のCパートのことを指しているのでは考えています。
原作コミック版には無かった號の再登場や神隼人という男の最後が加えられ、ファン感涙モノの内容になっても、原作コミックのラストである「でたなゲッタードラゴン」を超えた物語が綴られることは無いと考えていました。
ですが、最終話のCパートはそんな私の考えを見事に打ち砕いてくれました。
文字通り運命を超え、再び拓馬・カムイ・獏の3人が揃いゲッターロボアークでゲッター天(ワン)に戦いを挑む様を目に焼き付けられたことは、筆舌に尽くし難い喜びがありました。
それ程までに原作コミックの拓馬とカムイが戦うというラストは物悲しく、辛いものだったのです。
追加されたCパートもザックリ言ってしまえば、所謂「俺たちの戦いはこれからだ!」な為、決して万人が納得する終わりではないかもしれません。
ですが、アークチーム3人が同じ方向を向いているという事実が、心を震わせ、血を熱くしてくれます。
何度も言いますが、本作は未完の作品です。
アニメの内容はぶっきらぼうな展開が多く、作画や演出の様な視覚的な部分に関しては、鬼滅の刃や呪術廻戦等のハイクオリティアニメには遠く及びません。
それでも、スタッフの方々がこの作品に注ぎ込んだ圧倒的な熱意が心を掴んで離さないのです。
この点に関しては私がファンであるということも大きいかもしれませんが、それを加味しても是非一度視聴してもらいたい作品です。
もし貴方がこの作品を視聴し、言葉にし辛い「何か」を感じたのなら、迷うことなく心が導くまま最終話まで見進めて下さい。
作品を視聴し終わった後、貴方の心にもゲッターが宿ることでしょう。
まとめ
運命を超えたCパートは勿論、ゲッターザウルスチームのその後や、ゲッターカーンの戦闘シーンの追加に一文字號の再登場、神隼人の旅の終わりといった原作コミックにはなかったシーンが追加されて見やすくなった本作品は、原作ファン以外の方にもオススメ…はちょっとし辛いかもしれませんが、予算が少なくともこれだけアツい作品は作れるんだ!という見本の様な作品ですので、世の主流となっている溢れんばかりの予算でブン殴るハイクオリティ作品に食傷気味になった時にでも見て頂ければな、と思います。
余談ですが、もし本作品でゲッターに興味が湧いたのであれば、OVAシリーズの真ゲッターロボや新ゲッターロボを視聴してみると、原作者である石川先生が思い描くゲッターとは何なのかという点がボンヤリと見えてくるかもしれません。
「ゲッターとは何なのか」という謎を解明するのは、我々ファンにとっての永遠の命題ですが、未だそれは成されていません。
しかし、それを解き明かすのは、もしかするとこれを読んでいる貴方なのかもしれませんね。
その時が来るのを目をグルグルさせてハジをかかずに待ちたいと思います。
キャスト&スタッフ【作品情報】
キャスト
流拓馬:内田雄馬
カムイ・ショウ:向野存麿
山岸獏:寸石和弘
神隼人:内田直哉
流竜馬:石川英郎
一文字號:櫻井孝宏
カーター・マクドナルド:立木文彦
ゴール三世:置鮎龍太郎
流りょう:島本須美
スタッフ
原作 – 永井豪、石川賢
監督 – 川越淳
助監督 – 大平直樹
シリーズ構成・脚本 – 早川正
キャラクターコンセプト – 星和弥
キャラクターデザイン・総作画監督 – 本橋秀之
ロボットコンセプト – 堀井敏之
プロップデザイン – 岩畑剛一、森木靖泰、鈴木典孝
美術監督 – 根岸大輔
美術設定 – 滝口勝久
色彩設計 – 中間秀美
3D監督 – 後藤優一
撮影監督 – 高橋圭祐
編集 – 村井秀明
音響監督 – なかのとおる
音楽監督 – 井上俊次
音楽 – 栗山善親、寺田志保、横関敦、鈴木歌穂
音楽制作 – ランティス
音楽プロデューサー – 竹山茂人
プロデューサー – 内藤賢一、松元圭、山本貴、岩崎沙耶花、柏木豊、生駒穣海
アニメーションプロデューサー – 南喜長、本田稔裕
アニメーション制作 – Bee・Media×studio A-CAT
製作 – 真早乙女研究所
キャスト陣に関してはOVAシリーズを軸とした配役がされている。
コミック版準拠の彼が映像作品に登場し、声を発するのはファンにとって衝撃的であり、本作がコミック版の単なる映像化ではないことを証明した。
スタッフ陣に目を向けてみると、OVAシリーズを手掛けた川越監督を中心に、鋼鉄神ジーグの脚本家である早川氏やOVA版魔獣戦線にてキャラクターデザインを担当した本橋氏を起用する等、石川作品や永井作品のアニメ化に携わった面々を揃えている。
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